【ふるさと納税アドバイザー 河元智行】
2019年6月25日、東京都世田谷区の保坂展人区長は記者会見の席で、ふるさと納税に伴う東京都世田谷区の税金の流出に関し「税制そのものを崩壊させる段階に入ってきている」と批判した。寄付金集めに成功している多くの自治体では、地方交付税との「二重取り」になっているとも指摘した。ふるさと納税制度について「疑問がある。抜本的な改革を」と訴えた。
私たち市民にとって、「ふるさと納税」と聞くと、「お得」というイメージがあり、またそれにより自治体や地方活性化に貢献できるというプラスのイメージもあります。
しかしながら、一概にそうとも言えません。
この東京都世田谷区のような都心部の区市町村では、「ふるさと納税」によって大幅に税収が減少し、悪影響を与えてしまっているという現実もあります。
それは、住民税の流出という問題です。
本来、世田谷区に入る予定だった住民税が、ふるさと納税という仕組みによって、他の区市町村に流出しています。
世田谷区によれば、1年間で住民税が約53億円減少とのこと。
実は、このふるさと納税という税制、住民税の税収と、ふるさと納税での税収を比較し、税収がマイナスになった場合は、そのマイナス分の75%が特別交付税として「国」から補填されます。
例えば、住民税の流出が4億円、ふるさと納税の流入が1億円、トータルすると、マイナス3億円となります。
しかし、その3億円のうち75%、つまり、2億2,500万円は交付税が入ります。
実質、7,500万円の税収減ということになります。
特別交付税という存在があるということを考えると、国が商品を買い上げていることに近い制度とも言えますが、特別交付税があることにより、その税収減を軽減しているのです。
しかし、です。
実は、この特別交付税が交付されない自治体・区市町村があるのです。
それが、「不交付団体」。
不交付団体は、東京23区を含む東京都など、比較的裕福な自治体・区市町村に対して指定されます。
東京都世田谷区も、この不交付団体に指定されており、特別交付税の補填が一切ありません。
そうなると、ふるさと納税での流出分がそのまま税収減となり、自治体・区市町村に負担を与えることになってしまうのです。
世田谷区の場合、税収減はなんと53億円。
比較的裕福とは言っても、それなりの人口を抱え、それなりのサービスや社会整備費などもかかります。それなりにお金もかかるのです。
53億円が世田谷区内で住民のためにお金が使えないということです。
ふるさと納税という制度により潤う自治体・区市町村がある一方で、このような過酷な環境に置かれている現状、そしてそのマイナス税収は年々増えているという現実。
そう、私たちも手放しでは喜べない現実があるのです。
これは、ふるさと納税の裏側という側面もありますが、これらの仕組みや歪みも理解しながら、私たちはふるさと納税を活用していくしかないようです。
なお、特別交付税で税収減を補填してもらえない区市町村でも、ふるさと納税を実施しています。
今、私たちにできるとしたら、このような市区町村に対して、ふるさと納税の返礼品を選びこと。
少しでも返礼品や寄付の申込みをすることにより、税収減は軽減されます。
ということで、特別交付税の交付がない不交付団体の区市町村をまとめてみました。
ぜひ、ご参考までに。
不交付団体の区市町村ランキング10
(注)*は地方交付税による補填がある自治体
(出所)総務省「平成30年度ふるさと納税に関する現況調査(住民税控除額の実績等)について」を基に作成