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これって本当に被災と言えますか?サッカーJ1チーム・湘南ベルマーレの練習場水没から見る「真の被災地支援」とは?

【中小企業診断士 岬丈朋】

平塚市ふるさと納税による馬入ふれあい公園サッカー場等の災害支援について
先日の台風19号による相模川の水位上昇により、馬入ふれあい公園サッカー場や大神スポーツ広場等の公共施設が甚大な被害を受けました。
過去と比べ甚大な被害額となっていることから、平塚市ではふるさと納税を活用し災害支援を募ることとなりました。
湘南ベルマーレも日頃練習場として使わせていただいている、馬入ふれあい公園サッカー場をはじめとした災害復旧支援となっております。
多くの皆様のご協力をお願いいたします。

湘南ベルマーレホームページより
http://www.bellmare.co.jp/227165


この記事を筆者が最初に読んだ時に浮かんだ疑問が「ふるさと納税って、一(いち)サッカーチームの支援のために使えるの?」ということでした。読み直してみると、湘南ベルマーレも練習に使っている、平塚市が運営するサッカー場ということが理解できて、一旦は納得しました。
湘南ベルマーレのサポーターも心配して募金をしているということで、心温まる記事のように受け取りました。

しかし、もう一度記事を読んでみて筆者が問題視したのは、「相模川河川敷(・・・)」というところでした。馬入ふれあい公園には、相模川の堤防をはさんで川の外側に人工芝のサッカー場が、内側の河川敷に湘南ベルマーレも使用する天然芝のサッカー場があります。
今回、水没したのは河川敷の方ですが、そもそも河川敷は堤防の内側なので、川が増水したときに水没して、堤防外への越水・氾濫を防ぐのは正常な姿だと言うことができます。
また、平塚市に限らず、都市を流れる川の河川敷は公共的な野球場、サッカー場、運動場、公園や遊歩道として利用されています。
だいたいの都市で大きな川の橋を渡ると、草野球をやっているのを目にすることも多いのではないでしょうか。でもそれは通常の量の水が流れている時の土地の有効活用の域であって、本当に水没しては困るならば河川敷に作るべきではありません。

今般の台風19号では、ひじょうに多くの自治体で堤防の決壊や越水による浸水被害により、ふるさと納税による災害支援が行われており、大きな被害を被りながら寄付額が十分集められない自治体もあり、不公平感も問題視されている現実があります。
そんな中で平塚市が「河川敷が被災した」と称してふるさと納税の災害支援を募る事自体、首をかしげたくなります。また、よっぽど早く復旧したいという裏事情があるのではないか、早期復旧して、湘南ベルマーレがホームタウンとする、他の8市11町のどこかに練習場を取られたくないという魂胆をも勘繰りたくなります。

今年の台風や豪雨の災害で、河川の流域に被害がなくても、河川敷が水没した自治体が数知れず存在することは容易に想像がつきます。また、近年の異常気象からこの平塚市の河川敷が、来年、再来年、また水没することも十分考えられます。もし、そうなったら平塚市は、その都度、ふるさと納税の災害支援を募るのでしょうか。

もうひとつ問題視したいのが、なぜ湘南ベルマーレが練習場に河川敷を使い続けているのかということです。
今回の件で筆者が思い出したのは、高度成長期、日本のプロ野球にとって米国メジャーリーグが雲の上の存在だった頃、V9を達成した日本を代表するチームの練習場が河川敷にあって、何か同じようなことで問題になったよなあということでした。あれから半世紀近く、Jリーグの最上位にいるチームの練習場がいまだに河川敷にあることは、むしろ驚きでした。
今の時代、自分の居住地や勤め先にどのような水害リスクがあるかを把握し、住民は避難経路を決めたり、事業者は事業継続計画(Business continuity planning,:BCP)を立案したりすることが、大企業のみならず、中小企業にまで求められています。それに使用するのが、自治体が準備している危険度で色分けした地図、すなわち洪水ハザードマップです。台風報道の時に耳にされた方も多いのではないでしょうか。

で、今回水没した練習場はというと、当の平塚市が出している洪水ハザードマップでは川の中・・・論外ということです。
湘南ベルマーレには、1日も早い「河川敷ではない」練習場の確保し、選手やサポーターの命を守ることを最優先に考えていただきたい。その上で安全な練習場確保のための資金捻出のために、このふるさと納税制度を活用することが「真の被災地支援」と考えます。
選手やサポーターの皆さんもきっと願っているはずです。

この記事を書いた人
岬丈朋

みさき・たけとも/中小企業診断士。幼少期は高度成長期で、夏休み・冬休みには必ず紀伊半島の母の実家に帰省。生マグロを当たり前のように食し、磯の貝採りや昆虫採集の日々を送る。大手メーカーに就職後は、全国の生産パートナーを訪問するなかで、地方のモノづくりの底力を体感。地方こそが日本を支えると確信するふるさと応援ライター。

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