ふるさと納税の返礼品は不良品かも!? 中小企業に丸投げという産業構造

【中小企業診断士 庄司桃子】

2019年10月にふるさと納税の返礼品として発送した和牛に対し、「ほとんど脂身だ」などの批判が集まり、宮崎県美郷町や鹿児島県いちき串木野市が謝罪に追い込まれる、という事件が相次ぎました。(https://www.jiji.com/jc/article?k=2019101500131&g=soc

その他記事にはなっていないものの、返礼品が届かない、量が少ないといったクレームはふるさと納税販売サイト(https://event.rakuten.co.jp/furusato/)でも頻繁に目に入ります。
ふるさと納税の返礼品を生産・加工して発送するのは主に地元の中小企業ですが、ふるさと納税品の仕組みそのものが、中小企業にとって負担が高く、そのひずみがクレームになって表れることがあるのです。

その1 ふるさと納税は年末に受注が集中する

ふるさと納税そのものは年中受け付けているのですが、どうしても確定申告が迫っている年末に注文が殺到しがちです。また、年末はクリスマス、忘年会、お正月とイベントが重なり、特に牛肉などの高級食材の返礼品は需要が高まり、注文が集中しがちです。

返礼品を出荷する中小企業は、年末とか、12月24日までに返礼品を送らないとクレームが来る・・・というリスクにおびえて出荷作業をおこなっています。最終消費者からはクレームは直接来ないにしても、顧客である市町村の担当者からのクレームは中小企業にとっては心臓に悪い。来年から外されたら死活問題ですので、何とか市町村の担当者を怒らせないように、と何とか納期厳守を守ろうとします。その過程で、脂身が多いとか、品質面の劣化に対して多少なりとも目をつぶってしまうことも考えられます。

その2 生産加工や出荷まで中小企業に丸投げ構造

市町村の返礼品に選ばれた中小企業が生産、梱包。出荷まで一貫して中小企業に委ねられています。時々市町村の職員が視察に来るケースもありますが、結局は中小企業の責任で出荷しています。そもそもネットでの出荷に慣れている中小企業なら円滑に進むのですが、実際はそうではない会社も多い。

現場で何が起こっているのか。分かりやすいたとえ話ですが、とっても丹精を込めて育てて美味しいと評価の高いシャインマスカットの農家があります。これまでJAと道の駅に軽トラに積んで販売していたのですが、返礼品に選ばれました。これがヒットして、全国から殺到する何十、何百という注文を受け取り、商品を詰めて発送しなければいけません。受注は来るけれども、適度に熟したマスカットはわずかであり、あと1週間待たないと収穫できない。ただし待っている間にも受注は次々とやってくる・・・。最後にやってくるのは「何か月も待っているのに商品が来ない!」という★1つのレビューコメント。

または、包装材が足りなくなり、仕方なく新聞紙にくるんで送ったら「包装がずさんだった」という★一つコメント・・・。

市町村の職員もあまりにも低評価コメントが増えると「どういうことですか?」とクレームの連絡が来る始末です。本来は市町村の返礼品ということで紹介している商品なのですが・・・。

その3 受注する中小企業の経営悪化リスク

このような状況が数年続くと、大量の注文を受注に備えるように大型の機械設備を導入したり、多くの従業員を雇用する会社がでてきます。しかし、返礼品の注文が集中する年末以外はそこそこの受注しか注文がこないわけですから、設備も人員も持て余します。だからと言って従業員の解雇なんてできないですし、機械設備もそのまま稼働させなければいけません。毎月の人件費、機械設備のメンテナンス費、そして借入金の返済負担が重くのしかかります。毎月の出費に困ると会社は金融機関から毎月の運転資金を借りて、年末の大量受注で借入金を返済する、というサイクルを繰り返すようになります。

ここでもし、ふるさと納税の受注が例年を下回ったらどうなるでしょうか。また、市長が変わり、ふるさと納税返礼品を見直します!なんて宣言したら・・・。一気に受注がなくなるリスクがあるのです。何とか返済していた銀行からの借入金もついには返済ができなくなり、一気に会社は苦しくなるのです。

ふるさと納税で地元事業者を応援する!という題目は非常に良いものですし、地域活性化につながります。しかし、返礼品で受注が高まっていても苦しむ中小企業があることを少しでも心に残してほしいのです。

そして、最終消費者である私たちにできることは、「できるだけ分散して申し込む」こと。年末調整を意識して11月から12月に申し込んだ場合、発送作業は年末から年始にかけて集中します。なので、2月以降に申し込むことが受注する会社にとってはベストなのです。また受注数が少ない月のほうが、「返礼品が届かない」というトラブルの回避にもつながります。

この記事を書いた人
庄司桃子

しょうじ・ももこ/中小企業診断士。それから株式会社 代表取締役。中小企業向けの経営コンサルタント。従業員面談や研修を通した組織活性化と、収益や資金繰り対策が得意領域。ほぼ毎日、経営者向けのブログを発信中。人とお金に携わるストレスをいやすため、温泉旅行と、現地の特産品、お酒はかかせない。そんな自分に特産品を購入して節税として控除できる「ふるさと納税」は夢のようです。

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